読書記録と忘備録

マクロビオティックおばさんと、宗教にハマる人

 

お盆という事で、母方の祖母の家に遊びにいってきた。

そこで5、6年ぶりぐらいに、親戚のおばさんに会ったんです。

ちょうどお盆ということで同じように遊びに来たらしい。

 

元々はわりと肉付きがよい人だったのだけれど、びっくりするぐらい痩せていて、最初は誰かわからなかった。病的な痩せ方だったので、あえてその変化には触れない事にした。

 

そんなこんなで夜、夕食の時間。

お盆にみんなが集まると、祖母は腕によりをかけて料理をつくってくれます。

おばさんがの大好物の唐揚げやら、肉団子やらもいっぱいあった。

 

「あたし、ご飯と野菜だけでいいの」

 

おばさんに料理をとりわけようとしたら、こう言われた。

ああ、やっぱり何かの病気なのかな、悪いことしたな…。

そんな事を思いながら、ちょっと暗い雰囲気の中、夕食が終わった。

 夕食後のお茶の時間になって、おばさんがこんな事を言い出した。

 

「人はね、肉を食べないほうがいいのよ。」

 

そういって、最近読んだ本の話をしてくれた。

その本がコレだ。

 

長生きしたけりゃ肉は食べるな

 

 

うわぁ

書店でよく見かけるやつだ

 

とりあえず読んでみて、と貸してくれたのでその夜読んだ。

 

トンデモ本でした

 

とても香ばしかった。

簡単に要約すると、

 

・著者は元々肉食だったが ”師” に出会って肉を食べるのをやめた(30年ぐらい前)

・それ以来超健康。歯もバッチリだし、白髪もないし、病院も行かない

・だからお前らも長生きしたかったら肉を食うな。乳製品も食うな。酒は日本酒以外飲むな。 

 

内容を裏付ける科学的なデータはほとんど掲載されていません。そもそも著者の若杉さんは研究者などではなく、ただのおばあちゃんです。おばあちゃんの経験談の総集編です。

 

次の日、読んだ事を伝えた

 

 

次の日の昼食で、おばさんに読んだ事を伝えた。

 

「ね、納得するでしょ?西洋医学なんて信用できないわ〜」

 

目がキラキラしてた。手元にはご飯と味噌汁のお茶碗だけ。

 

否定してややこしくなるのもアレだったので、全肯定しておいた。こういうタイプの人の意見の否定はしちゃいけない、っていうのが僕の経験則だ。この種類の鉄は、熱いうちに叩くとあたり一面に飛び散って大惨事になる。

 

「何が一番しっくりきたかっていうとね、動物のくだり。草食動物は肉、食べますか?っていうところ。そうよね〜、草食動物ってお肉は食べないけど筋肉もあるし、力強いもんね〜」

 

うわぁ

 

「あの、そのへんは体の構造が・・・とかのツッコミはしませんでした。

 

どうやらこの本を読んで衝撃を受けて、菜食主義?になったらしい。でも見た目は不健康そのもの。前がつやつやして肉付きが良かったので、その落差からくる印象なのかもしれないが、「内蔵がダメになってね・・」って言われたら即信じる。

 

昔の野菜は良かった論

 

また、著書の中でも「いまの野菜は栄養が全く無い、死んでいる」と言われているが、おばさんもそれをまるっきり信じている。

数十年前の栄養成分表とくらべて、今の野菜は全く栄養が無いんだ!と山岡さんも言っていた。

 

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でもこれってウソらしい。

この問題に関しては、最近はてブ上位にあったこの記事を読んでいただきたい。

 

 さて、かつては旬の時期以外に農産物が出まわることはほとんどなかった。しかし現在、日本の農産物の大部分は周年供給されている。この違いをよく考えなければならない。

 一般に、旬の農産物は栄養価が高く、旬でない農産物は栄養価がそれより劣る。これは、植物の生理上、当然の結果である。ということは、旬の時期だけにならざるを得なかった昔のデータと、旬でない時期(ある野菜の旬が3カ月間とすれば年間の3/4は旬でない時期となる)が含まれる最近のデータを比べれば、後者の数値が低レベルになるのは当然の話である。このデータをもって、近代農法や新しい品種のために“いつも”栄養価が低いと見なすのは誤りだ。

http://www.foodwatch.jp/primary_inds/whatisgood/31807

 

統計の罠ですね。おばさんに「統計学が最強の学問である」も薦められたんだけど、お前本当に読んだのかと小一時間問いつめたい。

 

更に、栄養失調からくる病に関しても全く触れていない。

脚気とかくる病とか、風土病の事なんて出てこない。

栄養失調のせいで過去何人の命が犠牲になったのか。

ベジタリアンの薦めとかだと、サプリメントで栄養を取る事が推奨されているけど、おばさんは大丈夫なのかなぁ。

 

そもそも若杉さんは長生きや健康の象徴なのか? 

 

書店でよくこの本は見かけますが、この表紙を見て「若い!!」って思う人って本当にいるんですかね。76歳という年齢としては相応、むしろ老けてる気がします。

 

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 和田勉さんに似てる

 

白髪無し!歯も丈夫!とありますけれど、これってそんなに珍しくないですよね。

僕はド田舎の漁村出身なんですが、バクバク肉を食べて、しかも酒浸りみたいなおじさんおばさんはそこらじゅうにいますし、しかもみんなすごく元気です。90を超えてもハッキリ喋れて、農作業をバリバリやってるおじさんとか、若杉さんよりも若く見える80代後半のおばさんだっていっぱいいいる。それともこれは田舎だからなんでしょうか、70を超えて元気なご老人って実は少ないとか…?

 

宗教にハマりやすい人

 

あとこのおばさん、宗教をこじらせてる。

ちょっと怪しげな新興宗教。

毎月献金?に行ってるそうです。

 

マクロビオティックしかり、マルチ商法しかり、偏見かもしれませんが、

こういった考えにハマり易い人って、宗教との親和性がすごく高いんですよね。

強烈な思想に、すごく染まりやすい。よく言えば素直、悪く言えばバカ。

 

彼らは、フィルターが強すぎるのかもしれない。

ひとつの思想に染まってしまったら、それ意外は視界に入らない。

反対意見を見ても、否定要素を探すことしかできない。

「肉を食べれば長生きする」って情報があったとしても、粗を探す事しかできない。

 

あえて情弱・情強という言葉を使うが、

情弱と情強を分けるのはここじゃないかって、僕は思う。

 

情弱な人は、心動かされる思想にであうと、そこで思考停止してしまう。

それ意外の事柄を認める事ができない。

対して情強な人は、正反対の意見の粗を探すんじゃなくて、「へぇ〜、こっちはこういう考えなんだ」って、客観的に考えられる。

異なる意見も一旦取り入れて、自分で考えた結論を出せないと、人の意見に流されてばかりか、もしくは信者まっしぐらだ。

 

 

そもそも、宗教やらマルチやらにハマる人は「情報を集める」事ができない。

 

今回の若杉さんの意見だって、インターネットで数秒検索すれば、反対意見や、危険性があれよあれよと見つかる。でもおばさんは調べる事ができない。

 

食習慣を変える事は、今後数十年間の生き方に影響を及ぼす大きな選択だ。

そんな選択を、一冊の本の意見に影響されて決めちゃっていいんだろうか。

10円単位で節約節約大騒ぎしているくせに、ふらっと不動産屋に行って、気分でマンションを買うような愚かさだ。

 

彼らは情報を受動的に受け取る事しかできない。バイト先の部長からExcelの使い方をよく聞かれるけど、ネットで検索すれば3秒でわかるようなことだ。自分で検索する、っていう視点が抜け落ちてるようにしか思えない。

 

先日、こんなエントリたちを書いた。

 

「まとめサイトに洗脳された大人」と「まとめサイト思想に染まる若者たち」 

家入一真氏の影響で高校生や大学生が電話番号&口座晒しをしている件について考えてみた。

 

上記の記事でも、情報を咀嚼する事の大切さを述べた。

家入信者も、まとめサイト信者も、本質はこのおばさんと変わらない。

 

有名な人がいう事が全て正しい訳じゃない。

偉い学者さんの言葉だからって、盲信するな。

本に書いてあるからって、その情報を正しいと思うな。

 

できるだけ多くの情報を集めて、自分なりに考える習慣をつけよう。

それが、人にダマされずに生きていくための1つの手段なんじゃないかなぁ。

 

 

 

 

PS

マクロビオティックを行っている人って「穀菜人(こくさいじん)」って言うんですね。鼻水でるかと思った。

 

だます心 だまされる心 (岩波新書)

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